伝統的工芸仏壇は、伝統工芸士の資格を取得した卓越した職人の、圧巻の技の結集によって成り立っています。
お仏壇のフォルムを決める最も基礎となる工程を担うのがこの木地師。大まかな構造は決まってはいるものの、その絶妙な幅間や、余白の取り方、アール(曲部)の滑らかさやそのバランスは木地師に託されます。またほぞ組みなどの外面に見えない、木地内部での細かな補強構造も木地師の知識と技術の賜物です。木地の美しさは次の工程である漆の美しさを左右させる為、絶対感覚が必要となるのです。愛知屋ではお客様のご要望に沿った機能性を特別に製造することが可能です。(内容によっては不可能な場合もございます。)
「漆黒」という言葉があるように、漆が魅せる黒の絶対的美しさは伝統的工芸品仏壇においては欠かせないものです。また、漆には抗菌作用があったり、堅硬な為、害虫から木地を守るといった合理的意味があるのです。また「呂色仕上げ」といった呂色師という専門職人による、漆を鏡面のようにさらに豊かな光沢感で上質な仕上げにする工程があります。今や世界が注目する日本の美観の旗手ともいえるでしょう。
金具は伝統工芸士の金具師により手打ちで溝をつけることにより、花鳥や波など、様々な柄を象っていきます。装飾の役割と、木地の保護の役割を兼ね、重厚な装飾金具の美は職人技術が光る仏教美術であり、想像を絶する綿密な作業の賜物なのです。愛知屋では別注金具を作成することも可能です。
彫る木材の材質や、彫りあげる対象(人間、草木、鳥、など)やその部位によって、数種の彫刻刀を用い、使い分け、命を吹き込むように彫りあげます。花弁や天女の羽衣の曲線などその滑らかな技術は圧巻です。愛知屋ではお客様のご家族や、代々伝わるご家族のお仕事やご自宅のまわりの風景、家紋などを彫ることも可能です。
お仏壇において重要な要素である「荘厳」を実現する上で、中心的存在となる宮殿。本尊である仏様を安置する直接的な場所であり、仏壇製造の中で最も手間のかかる工程になります。「肘木斗組」という社寺建築技法を用い、宗派やお仏壇の種類によって、柱や屋根も変わり、非常に複雑な構造になります。寸分のミスなく組み立てる正確さを必要とします。
金箔とは、金を約1万分の1に引き伸ばし製造されています。
あまりの薄さに表面には微細な穴が空いており、微風が吹くだけでも飛んでいったりくしゃっとなってしまうそれはそれは取り扱いの難しいものです。それを竹バサミ(これもまた日本の伝統技術)を使い、まさに〝職人技〟な手つきで押していきます。通常は一辺3寸の金箔を使いますが、中には「大箔」とよばれるサイズの大きい金箔は、面積が大きい分、より風の影響を受けやすく、さらに高度な技術が必要となります。また金箔は押し方によって輝き方を変えることができます。お仏壇の使用によって押し方を使い分け、印象やお仏壇の個性を変えていきます。
文字通り息をのみながら押される、箔押しの息をのむ妙技を御刮目ください。
またお位牌の文字彫りには、一般的には金泥やアクリル金が使われますが、愛知屋のお位牌では金箔を使用しております。
漆を塗った木地に色漆で絵付けをします。色漆は漆に弁柄(朱)や鉄粉(黒)などを色によって混ぜ合わせることで作ります。その調合の具合によって色の発色具合が変わります。
また、絵付け技法にも様々な種類があり、「平蒔絵」「高蒔絵(盛り蒔絵)」「研ぎ出し蒔絵」などがあります。また、描く絵柄によっては、蒔絵の中にアワビや夜光貝をはめ込んだ「螺鈿」技法や、本金粉や本白金粉と組み合わせることもあります。みなさんが絵を描くときの水彩やアクリルとは違って、漆は非常にどろっとしており、筆使いが非常に難しく、絵柄自体の構図や構想を担うのも蒔絵師の技術の中に入るため、総合的な経験が必要となります。蒔絵に描かれる絵柄は四君子や、鳳凰、松など、繊細さを必要とする絵柄が多いため、繊細なラインを出すのには高度な腕が必要になり、お仏壇の印象を決める重要な部位になります。愛知屋では、彫刻同様、新築などの際、お客様のご自宅の景色やお客様の思い出の場所や家紋などを蒔絵にすることができます。どうぞご相談くださいませ。
お仏壇製造工程の最後にあたるのがこの組立です。全てのパーツが揃ったら、組立師が組み立てていきます。金具を柱や本体につけたり、須弥壇や宮殿を組み立てたり、そしてお仏壇本体を丁寧に歪みや隙間なく組み立てていきます。お仏壇の構造を熟知し、手順を間違えることなく組み立て、そして傷や不具合がないか、入念な検品をするのもこの工程です。
組立ひとつとっても、非常に神経を使う作業になります。
お客様に質の高いお仏壇をご提供するため、また伝統技術の考え抜かれた素晴らしさを、あらゆる工程において最善を尽くし、伝統的工芸品仏壇が魅せるディテールの魅力の妙をお伝えできたらなと思います。